こんにちは♪
本日の一冊はこちら(*’▽’)
あらすじ
「ねえ、私たちで桐島くんを共有するの、ダメかな……?」 俺は今、橘さんと付き合いながら、早坂さんとも付き合っている。 共有のルール。それは互いに抜け駆けしないこと。「一番目」になれない方が傷つくなら、それは優しい関係とすら言えるだろう。 たとえそれが、歪で、甘美な延命措置に過ぎないとしても。 だけど……。 二番目でよかったはずなのに。 それでも一番目になりたくて。 互いにエスカレートする好意と行為。 その果てに、俺らの関係はやがて軋みを上げ始め……。 もがいて、すがりついて、大事だった何かを摩耗させながら。 どこまでも深みに堕ちていく。
おススメ度:★★★★
前巻の衝撃のラストからどうなるのかという気になる気持ちから読み始めて一言、、、「ヤバい」の一言でした。
前の巻までを読んでいる方はわかっていると思いますが、女性陣のメンタルがとても言葉にするには難しいほど壊れているのがわかる作品になっており、今巻も例にもれず女性陣のブレーキが壊れ、前巻以上に衝撃のラストを迎えることに…
もはや着地地点も全く分からず、修復不可能なレベルまで壊れてしまった2人はこの先どうなるのか?
『共有』の意味
前巻のラストで橘さんが早坂さんに提案した『共有』という言葉。
普通に考えれば1人の男性を2人で牽制しつつも仲良くしようという、不健全極まりない状況ですが、あの時点でどちらかを選択するというとこはできないですし、桐島に”選ばせない”ためとはいえどうなのか?
しかし、蓋を開けてみれば、共有するためのルールによって自分たちの気持ちを落ち着かせようとするある意味安全装置と、主人公をがんじがらめにするためのもの。
ルール自体は壊れた2人が考えた割には結構まとも?だが、作中でも言われている通り、『守る気がない』ルールを制定する意味はあるのか?
そして、そのルールによってお互いの行動を監視し、正当化するという結構ヤバい状況がほぼ1冊にわたって展開されています。
深刻化していく泥沼
前巻までもすでにヤバいレベルの泥沼を形成していた3人+柳先輩ですが、今巻では橘さんvs早坂さんという構図が激化し、ことあるごとに張り合う場面を見ることができます。
2人がお互いにやりあっているだけならある意味幸せだったのかもしれませんが、それに加えて桐島の気を惹くために今まではしていなかった行動を取ってみたり、さらに柳先輩も橘さんへのアプローチの方法を変えることで、橘さん自身もヤバくなる状況に…
柳先輩については前巻のラストがラストなだけにどうなるか結構心配していたのですが、くじけず、さらに闘志を燃やし橘さんへアプローチする姿には本作にいて本当にいいキャラなのか?と本気で心配してしまうほどいいキャラです。
ライトノベル、さらにラブコメというジャンルでここまで泥沼化する作品はなかなかないと思いますが、この状況をしっかりと書き切る作者様には本当に脱帽ものです。
主人公・桐島について
3巻の時点で初めからの評価は覆らず、恐らく賛否が最もわかれる主人公。
橘さんと早坂さんという2つの激流に飲み込まれ、現状に流されるだけになっているが、元をただすとすべて彼の元に帰っていくのだから正直弁解のしようがない…
2人のことをしっかりと考えているといえば『誠実』と言えなくはないですが、それを盾に結論を先延ばしにし、時間が解決してくれるのを待っているようにも感じますし、2人の誘惑に簡単に理性を放棄しているあたりどうなのか?
また、『理想主義』という名の現実逃避者という面も見えてしまうのでほんとどうしようもない。
彼が『選ばない』からこそ現状の泥沼が形成されているのであり、今巻のラストを経たことで無理にでも彼は成長するのか?
それとも今までも成長する機会自体はあったはずなのにこのまま変わらず、『理想(彼にとっても最もいい状況』を追い求めるのか…
前巻以上に衝撃のラストを迎えた今巻だったが、この先本当にどうなってしまうのか。
1番目の橘さんを選ぶのか、それとも2番目の早坂さんを選ぶのか、それとも…
どのように動いても残りの時間は少ないように感じますが、桐島は”自分”をもって選択できるのかがカギになってくるでしょう。
そして、今巻で修復不可能までに”壊れ”てしまった橘さんはその選択を良しとするのかも微妙なところ。
蟻地獄のように徐々に深みに落ちていき、もはや後戻りできない状況化でどうなっていくのか、次巻が楽しみでもあり恐ろしくもある作品です。