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あらすじ
「……博道くん。たすけて……」
理不尽な大人の脅迫により演劇が出来ないほど傷ついた晴香は、心の拠り所に俺を求める。
でも……俺はもう晴香を求めてはいなかった。俺の心にはもう時雨しか居ない。晴香の心が落ち着けば別れ話を切り出そう。迷いは無い。時雨の与えてくれた『猛毒』が俺の心の奥底まで染み込んでいたから。
だが俺は心するべきだった。
『猛毒』(あいじょう)とは身を滅ぼすが故に毒なのだと。
毒々しく色づいた徒花が、堕ちる。”不”純愛ラブコメ、最終章――
おすすめ度:★★★★
感想
まずは無事完結おめでとうございます。
1巻というよりタイトルから不穏でしたが、巻が進むにつれてどんどん出てくる”ズレ”。
そして何より時雨に惹かれつつ、晴香を傷つけないように必死に抵抗しながら思い悩む博道の姿には結構くるものがありました。
巻が進むごとにおかしくなっていく晴香と博道との距離感。
そしてそれとは逆にどんどん親密になる時雨との距離。
今までの出来事を一気に回収するという濃密で、濃厚な三人の関係性を多くの方に見てもらいたい!!!
どろどろしつつも、確かにそこには”純愛”があるのがわかる作品です。
自らの”理想”を追い求め続ける晴香、夢への切符を掴むため、すべてをなげうっていった先で出会ったのはトラウマの男性。
因果応報と言えばそうなのだが、この巻1冊で晴香が堕ちるところまで堕ちていく姿は結構くるものがありました。
彼女の中に最後に残ったのは博道との楽しい思い出・・・だったらどれだけ幸せだったか…
自分の理想を相手にも無理やり当てはめてきた結果が彼女の最後だと思いますが、それにしても彼女に関してはどうしてもいろいろ考えてしまいますね。
ラストでは意味深な状態で終わっているので、彼女自身いったいどれだけのことがわかっているのか、、、
すべてわかっていても博道に依存しきっている彼女ではどのような状態であっても離れるという選択は無いのはわかりますが、その執着には尊敬すらします。
そして本作のメインヒロインである時雨…
彼女に関しては1巻のころから未来の様子として意味深な幕間がありましたが、その意味を知るとき、ある意味恐怖すら感じました。
彼女の”愛”は晴香とは真逆で、相手のすべてを包み込み、すべてを赦す包容力が大きなものですが、彼女の元来の性格が、ハッピーエンドを許さない…
彼女もまた博道に”執着”する者の一人というのは今までの行動からもわかりますが、それゆえ、博道の逃げ道をすべてふさぎ、自分から逃げられないようにする徹底ぶり…
ラストの光景は、ある意味完結した二人の姿だし、どんな場所であってもそこで”世界”が完結しているのがよくわかるラストでした。
この作品は決してハッピーエンドではありません!!!
それでも高校生なりに考え、悩み、傷つき、成長していく姿がたくさん見せてもらえました。
最後にはそれぞれの『執着』という相手を求めるという点では『純愛』に最も近い形で終わったのはすごいと思いました。
それぞれ仮面をかぶり、それぞれが抱える”秘密”はわかっていても墓場まで持っていきそうな雰囲気でしたが、ここまでドロドロしたラストというのも珍しい。
再度完結おめでとうございます。
次回作も期待しています。