同い年の妹と、二人一人旅

MF文庫j

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あらすじ

「旅は一人に限る」が信条の高校生、月島海人。好きな時間に好きな場所へ──効率よく計画通りに進められる魅力に惹かれ、バイト代を貯めては全国を一人旅していた。しかし父の再婚で義妹ができたことで、計画通りに行かない毎日が始まる。北海道から来た連れ子の美少女・冬凪栞は同い年の若女将。仕事をするうちに「旅」に憧れた彼女は、海人の旅行についていきたいと言うのだ。当然それを拒否する海人だが、栞の心中を知り仕方なく了承。代わりに、二人でそれぞれ一人旅をする「二人一人旅」ということにして、日帰り旅行から始めるが──。旅を通して、お互いを知っていく。心温まる二人の物語、出発です。


おすすめ度:★★★★

一言:とある事情から『一人旅』をこよなく愛する海人が栞と共に『旅行』に行くことで、新しい価値観を抱いていく成長を感じられる一冊です。


感想


 最近ちょくちょく見る『旅行』ものの作品。

 『一人旅』をこよなく愛する海人がたまたま立ち寄った旅館で若女将として働いているヒロインの栞と出会うという『旅』ものとしてはふさわしい出会いを経て自分の旅行記を話すところから物語は始まる導入は結構好みでした。

 その後はどこで知り合ったかはわかりませんが、両親が結婚し義理の兄妹となり上記した通り海人の旅行記と、本当の父親の旅行記から、『旅』というものに並々ならぬ興味を抱いた栞が『一人旅』がいいという海人を必死に説得するシーンは結構読んでいて面白かったです。

 『一人旅』に固執する海人の頭の固さにはこちらも辟易しましたが、そこで折れずにアプローチを繰り返す栞ですが、決め手が栞自身ではなく周囲の後押しと栞の『旅』に対する根底にあるとある『もの』というのがまたよかったですし、それを話題に出すことで、今後も展開を広げられるようになっているという”舞台装置”としても最高です。

 『旅』と言ってもいろいろ種類がありますし、旅行好きの人に聞いても様々な形で答えが返ってくると思います。

 作中の海人は『一人旅』という目的地から行動まで自由度の高いものがいいと答えていましたし、栞は『グループでの旅』で、その場の感動や発見を誰かと共有することがいいと考えていると思います。

 もちろん『日帰り』や『ツアー』・もう少し広げれば『キャンプ』も旅行の一種になると思いますが、ちなみに自分は『泊り』なら一人でも多人数でも好きです。

 こういった作品を読んでいると自分もどこかに出かけたくなるのが不思議…

 さて、それぞれに”理由”があり『旅』をする二人ですが、今まで『一人旅』しかしてこなかった海人にとって栞と共に行く『旅』は新しい発見が多かったように感じられました。

 自分の知っている知識を相手に教えたり、2人だからこそわかる新しい発見や感動。

 そして何よりその場で現在の感情を共感できるというのが恐らく一番大きい発見だったのではないでしょうか。

 最初はいやいやでも自分の話を真剣に聞いてくれたり、感動を分かち合うことで『一人旅』では感じることが絶対にありえないことが次々と押し寄せ、自分の感情に振り回されるのは思春期独特だと思います。

 栞との『旅』を通して変わっていく海人の価値観の変化を見て、今後どのような場所に行くのか、そして『二人一人旅』という結構意味深な言葉の塔着地点を見てみたいと思える作品でした。

 このタイプの作品読むと現地に行きたくなるのですが、旅行ってお金がかかるんですよね(泣)

 実際本作の2人も平日はバイト三昧で土日を使って近場とか行って、恐らくそれ以外に給料使ってないのでは?(旅行用の荷物は買うかもしれませんが…)

 次巻ではいったい何処に行ってどのような感動をくれるのか楽しみです。

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