創成魔法の再現者 3 魔法学園の聖女様 〈上〉

オーバーラップ文庫

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あらすじ

ユルゲンから密命を受け、貴族が通う王立魔法学園へ入学したエルメス。
とある事情で『原初の碑文(エメラルド・タブレット)』の使用を禁じられたエルメスは、家格や魔法に難ありの問題児が集まるBクラスへと配属される。
実力を隠して学園生活を送るエルメスを自分たちよりも弱く、出来損ないであると見下すクラスメイトたち。
そんな彼らの傲慢な所業にエルメスが黙っているわけもなく……!?
実力の一端を見せてBクラスを認めさせたエルメスは、彼らが燻る理由を優等生が在籍するAクラスへの劣等感だと看破。
Aクラスを超えるべく常識を破壊する魔法講義を開始して――!?
無才の少年が世界の常識を覆す最強魔法譚、第3巻!


おすすめ度:★★★


感想


 舞台は学園へと移る今巻。

 能力に制限を掛けられ通うことが許されたエルメスとエルメスと学園生活を送ることを最上の楽しみにしているカティアだが、ここでも王国の悪しき風習が2人の邪魔をする。

 様々な面で優遇されるAクラス・その逆でどこまでも貶められるBクラスという醜悪なクラス分けにより魔法を十全に使えるようになり、家格も『公爵』(爵位としては最上位・これより上は王)と申し分ないということで、カティアは晴れて?復学と同時にAクラスへ

 一方エルメスは元は貴族だが、現状は平民扱いであり、出身が不明瞭ということでBクラスへ編入することに。

 今まではアスターの独断という形で王国の汚い部分がとてもよく見えていましたが、今巻ではそれを享受し、その立場に甘んじている子供世代との話。

 正直反吐が出るほどの醜悪さ…

 日本という階級制度があいまいなところで生活していたからかもしれませんが、流石にズレがひどすぎてやばい。

 今回の一応の”敵”というか当て馬は言葉で扇動するタイプのようですが、その論法がひどく矛盾した内容に頭を抱えたい気持ちに…

 いや、こういうキャラはどれだけ痛めつけられても良心が痛まないのでいいキャラだとは思いますし、作品としてはわかりやすい必然悪なのでいいのですが、もう少しやり手にできませんでした?という感想を…

 ラストで一応次巻が本番ぽかったので、本物の悪意を持った”敵”を目の前にしてエルメス達はどのように対応するのか楽しみです。

 学園編ということですが、元々アスターも通っていた場所ということであまり期待もしていなかったのですが、まさか想像以上のひどさ。

 教育機関の場としての体裁すら保たれていないのはエルメス視点でしか物語が進んでないからか、Aクラスなら相応の教育がなされているのか?(勘違いが多いのでまともな教育がされているとは思えないが…)

 学校というのは社会の縮図というのは理解できますし、現代日本でもそのような側面は多くあると思います。

 そんな中でも本作の差別主義はやばいですね。

 そんなクラスに編入したエルメスは彼の師匠が過去に体験した空気を肌で実感し、絶望をあらわに。

 前半はそんな感じの陰湿な空気が全開になっており、時折登場する今回の当て馬君の発言と行動が本当にイライラさせる天才で、流石”あの”アスター殿下の側近と言えるほどの頭のお花畑感。

 そんな前半から打って変わって後半は全く違った空気感が。

 ”現状”を受け入れ諦めていたクラスメイト達に対して『期待しない』こと、そして彼らの”望み”通りの行動を取ろうとしたエルメスに対して『待った』をかけた前巻でも登場し、彼に対して”憧れ”を抱いたサラ。

 彼女の想い、考え方を聞くと元々の彼女の性格がとてもよくわかるというもの。

 前巻まではアスターの強権によって言いなりで、流される状況が多く、自分の意志が無いように感じていましたが、今巻では上記のエルメスに対する説得を始めとし、彼女の”本質”が垣間見れるように。

 アスターによって歪められていた彼女の本質は、それこそ”聖女”を名乗るのに十分なものを持っており、落ちぶれてなお彼女についていくクラスメイトがよくわかります。

 そして師匠が耐えられず、去ることになった場所でエルメスはある意味師匠を超える選択を。

 クラスメイトを鍛え上げAクラスに対して下剋上を成し遂げようと特訓を開始。

 かけがえのない友人も作ることができ、成長者としての一面を後半では見られることができました。

 もちろん、今回成長したのは彼のクラスメイト達。

 皆が皆とは言いませんが、その心は当初に比べ物にならないほど自信を持ち、劣等感というものも少なくなっているように感じました。

 自信を取り返したクラスによって今後学園がどのように変わっていくのか…

 さて、本作のメインヒロインのはずなのにクラスは別にされ、Bクラスにかかりきりにエルメスがなってしまったことから登場自体が少なく、また、作中から察するに2人が共に過ごす時間が極端になくなったことがうかがえ、爆発寸前まで追い込まれたカティア…

 ヤンデレとまでは行っていないですが、嫉妬にかられた彼女からはその片鱗が見えた気が…

 今回はある意味ストレス発散の場が用意されていたので良かったですが、今後も同じようなことが起きた際や、ほかの女性が彼に言い寄っている場面に出くわしたとき彼女はどのような行動に出るのか…

 この二人の主従を越えた関係にいつなれるかというところにも注目していきたいです。

 比較的満足できる内容だったのですが、貴族として将来国を支える立場の人間のはずの彼らがあんな幼稚な言葉で自分の行動を左右しているという部分を見たりしていると流石に…

 本作の貴族というのは頭がお花畑か何かじゃないとなれないのか疑うレベル…

 ラストではまっとうな”敵”が登場したので、今後は今回までのような頭の弱い”敵”ではなく、もっとしっかりした”敵”であることを期待。

 小さなところから意識改革し始めたエルメス、今後学園がどのように変化していくのか楽しみです。

創成魔法の再現者 2 無才の少年と空の魔女 〈下〉

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