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あらすじ
人生オール80点。そんな俺が託されたのは、元トップアイドル・香澄ミルの世話だった。ファン対応がしみつきなかなかクラスに馴染めないミル。そんな彼女に頼られるうち、俺たちは図らずも運命共同体になってゆく。
おススメ度:★★★★★
おすすめポイント
・登場人物たちの繊細な心理描写
・ヒロイン3人の醜くも人間らしい考え
・主人公の精神的成長
感想
全体的に重めの作品だが、嫌な重さではなく、思春期特有の”悩み”や”葛藤”といったものや、自覚している自分の”汚い”部分を隠しながらも何ともできない自分に自己嫌悪を抱く登場人物たちの絡みゆく想いも交えてとても面白かったです。
ヒロインは3人登場し、それぞれがそれぞれに一物をその腹に持っていますが、一人ずつ深堀されるのが楽しみです。
簡単なヒロインの説明を…
香澄 ミル:今巻のメインヒロイン。主人公の協力の元”普通”の女の子になるためアイドルをやめ、転校してきた芸能系の才能に愛されたヒロイン。
白樺 冬華:主人公の年上の幼馴染。上記のミルを主人公に託した張本人。現役のアイドルで何かと世話や黄な一面も。
久遠 琴乃:主人公の中学時代からの同級生。主人公と通じ合うことがあり、結構仲がいい。オンとオフがはっきりと分かれており、裏ではガチのアイドルオタク。
上記三人に主人公を加えた面々が話の中心になり、その誰もが心の中では”後悔”や自分を”偽って”いることを自覚するという人間味あふれるキャラクターになっています。
1巻のメインヒロインであるミルは才能の上に胡坐をかかず、あらゆることに”努力”し、自らが納得できるところまでやるストイックな性格をしているアイドルでしたが、ある出来事をきっかけに光り輝く芸能界を引退し、”普通”の女の子に戻ると言い残しますが、ここでいう”普通”とは何か・・・
”大多数”ということであれば、『コミュニケーション能力が”多少”ある』『流行に敏感』等ありますが、それが”普通”かと言われれば首をかしげると思います。
確かに作中のミルが転校してきてからの行動を見るなら自分たちが想っている”普通”とは乖離していることがよくわかります。
今まで過ごしてきた環境とがらりと変わり、戸惑う場面が多く、主人公のサポートもまともに機能しないことも。
それでも生来のストイックな性格と、どれだけの逆風に立たされてもそれらをはねのけ、徐々に前進する姿はとてもよかったです。
しかし、彼女も人間なのだからそれらの行動について”理由”が存在し、それが明らかになったところから個人的にはさらに魅力的になりましたね。
ある意味誰もが抱える気持ちを人一倍感じたい、感じていないと存在意義を見出せないといった感じでしたが、話が進み、主人公との距離も近くなっていくことで、運命共同体としての側面が強くなっていき、ラブコメらしい感情を手に入れてからの行動はとても早く、もしかしたらこのまま独断で逃げ切れるか?
このヒロインを筆頭に裏側の人間らしい”醜い”部分が描かれるにつれてそのキャラがどんどん魅力的になっていく作品です。
そして例にもれず主人公も同じですが、彼とヒロイン達とで全くと言っていいほど違うところが1つあり、それは”熱中”するものが何もないこと。
ヒロイン3人は形は違えど『アイドル』というものに熱中していますが、主人公にはそれがないのが特徴で、ミルと深く関わり、そばで彼女を見ていくことで自分の殻を破り、一歩前に出る瞬間はどのような作品であってもいいものですし、その一歩は小さいかもしれませんが、気づき・踏み出せるかは別です!!!
”熱中”するものが見つかって、その先にいったい何が待っているのかはわかりませんが、無為な時間を過ごすよりは少しでも有意義な時間を過ごせるといいですね。
社会人になればたとえ”熱中”するものがあったとしても、なかなか手を出せなくなることも多いので、学生時代に少しでも有意義な時間を過ごしてもらいたいですね。
最後に
全体的に『重め』の作品ではあるが、その分心理描写が綺麗で人間味あふれる作品でした。
今巻ではミルが話のメインでしたが、ヒロインが3人もいるので、一人づつ丁寧に深堀していってほしいです。
とても面白かったので2巻にも期待大の作品です。